Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

パリダンサー図鑑(3) 超イケメン正統派ダンサー――Michaël Cassan(ミカエル・カッサン)

 まずはこちらの写真を。

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 男性ファッション誌顔負けのイケメン俳優かモデルか――。

 フェイスブックの写真には彼の美しい肉体が神々しく輝き、もうこの先、一生、美術館なんぞでギリシャの彫刻みたいなもん見なくていい・・・(私だけ?)

 彼はモデルでも俳優でもなく、れっきとしたフランス国家ダンサーであり、ダンス教師、コレオグラファー、Michaël Cassan(ミカエル・カッサン)。スタジオハーモニーでディプロマ取得後、 "Les Ballets Temps d'Aime" などで経験を積む。様々なミュージカル俳優として活躍した後、2007年、Centre National de la Danse(国立ダンスセンター)で正式に国家ダンス教師資格を取得した。「彼の特性は・直感的・ダイナミックであり、異なる世界の探求を通じた彼のイメージ力」にあると書かれている。

 彼はスタジオハーモニーを皮きりに、マルセイユ、リヨン、トゥルーズ、ニースといった国内各地から、ベルギー、イタリア、ポーランド等海外でも教師実績を積み重ねる。2010年、ついに彼は自分自身のカンパニーを設立。

 ミカエルの指導、振りの多くはダンサーの音楽性とともに、波動、スイング、シンコペーションから成る。それは反対方向の回転と回転から開始されうる。つまり、身体の異なるセグメント別に、振幅が多様化するわけである――。

 と言われても、ダンス、特にコンテンポラリーを見たことのない人にとっては“なんのこっちゃ”、という感じだろう。彼の踊りを見てみるのが手っ取り早い。その豊かな柔軟性を生かし、まさにコンテンポラリー寄りの、螺旋的な動きと3次元の空間に焦点を当てた作品作りを行っている。スタジオハーモニーでは、ほぼ毎日のように彼のクラスがある。モダンジャズの初級から上級まで、そしてコンテンポラリーでは最上級クラスまでを受け持つ。最も多忙な、そして人気のある若手教師といってよい。

 モダンの中級クラスがsalleAというガラス張りのいちばん大きな教室で行われていたので通しで見に行った。これまで生徒は男女半々ずつ、40人近くがひしめき、モダンで中級といってもどう見てもコンテ専攻といった生徒たちが多い。そして教室でのミカエルは恐ろしく怖い。笑顔を見せることはなく、生徒に媚びをとらない。獣のような鋭い目つきでバーに手をかけ生徒を見渡している立ち姿からは、それだけで大物のオーラが漂っていてただでさえ近寄りがたい。超硬派、余計なことは一切喋らず、生徒にはおもいっきりダメ出しをし、まず振りに入るときには最初に今日のパーツを自分が踊って見せる。生徒は車座になって、それを食い入るように見つめている。ミカエルはそこに生徒なんか居ないのかと思うほど、ひとりの舞台であるかのように、大教室を自在に駆け巡る。「あんなすごい踊りを自分もやるのか」と、誰もが唾を呑むような緊張が流れる。

 ひと目見て、プロフィール解説の意味が飲み込めた。鍛えられた身体はエネルギー強度を自在にあやつり、回転によって産み出される3次元空間において、彼独自の舞踊言語を解き放つことに辿り着いたわけだ。うん、凄い。凄い、と私はガラス越しに何度も思った。コンテまがいのもの、コンテっぽいもの、こうすりゃコンテらしく見えるでしょ、的な、精神のない形だけのダンスをたくさん見てきた。でも彼の舞踊は圧倒的な彼の「言語」であった。まったく異論をはさむ余地はない。こんな空間の制しかたがあっていいのか――と思うほど。

 こういう多様な人材を輩出できるフランスのEAT、職業訓練制度はやはり凄い。ダンスプロフェッショナルが規定の教育を受けた国家の資格というのも凄いし、教師になるためにはさらにディプロマをとらなければ教えることはできない。とにかく身体の隅々までヨーロッパの気品あふれる香りのしみ込んだ、若手イケメンダンサー、フランスダンス界の王道を今、威厳を持って駆け抜けつつあると言っていい実力NO1である。

 
"Wonderful Life" Jono McCleery / Chorégraphie ...


Sobanova 2014 Michael CASSAN - YouTube