Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

書くことと、踊ること

 作家になるため、三十数年暮らした日本を出て、フランスにやってきた。11年勤めた大手記者の仕事も辞めた。この先フランスでひとりで生きていこうと思ったし、日本には、だから少なくとも11年は帰るまい、と思って、全て片付けて出てきた。

 明日で一年通ったソルボンヌの語学授業も終わり、次年度の身の振り方を考えなくてはならなくなる。ビザを学生身分で更新するのに必要な残高も、余裕もなかった。一年の創作の結果はフランスではもちろん、日本でも実を結ばず、このままだと強制帰国となりかねない。そのときは、NYへダンスの道で行くしかない、とも考えた。実際、BDCへの憧れは日に日に募っていった。何故フランスに留まり、アメリカから持ち込まれたジャズダンスをやる意味があるのか。

 ダンスがあったから、何とか狂わず異国にあって自分を保ち続けている。収入はない毎日に、これからどうやって生きていこうか毎夜頭を抱えうなされない日はない。

 語学学校の費用が高すぎて無理なら登録料だけで済む大学に入ってしまうことぐらいしか、合法的に滞在し続ける手段がなさそうだ。文学の王道、ソルボンヌ・ヌーベル(パリ第3大学)はもちろん、ありとあらゆる可能性を検討しつくしたが、望みは尽きた。そんな時、ふと「ダンス専攻で登録してみたらどうだろう」と思いたち、学科のあるパリ第8大学のサイトに行きついたのがほんの昨日のこと。マスターの締め切りまであと一週間を切っている。特に外国人の登録書類はやたら多く、今から必要エッセイの準備に取り掛かって郵送して間にあうのかどうか――。インターネットで事前登録後、5つまで他学科が同時に応募できるというのでついでに調べていたら、なんと、フランスに「クリエイティブ・ライティング」の学科があることが判明した。驚いた。この文化は、米国のアイオワ大学に代表される英語圏文芸の(イギリスならイースト・アングリアね。カズオ・イシグロも出ている)特徴であり、まさかフランスにあるなんて思いつきさえしなかったからだ。(と、学科紹介にもイントロの部分で書いてあった・笑)フランスではMaster de creation litteraire という。当然、即登録した。大変なのはこれからだ。何十枚という入学審査用提出作品がフランス語で必要になる。そのほか作品・出版履歴、CV、プロフェッショナル・プロジェクトの文面等、恐ろしいほどのペーパーが提出必須になっている。

 文学部でなく、アートの学部に創作学科MAがあったか――。全くきづかなんだ。そんなわけで、これから1~2週間ほどは提出作品やら応募資料作成に身を投じてみようと思う。やらないで泣いているより、やってダメだったら納得できる。

 書くこと、踊ること、どちらも私を構成する大事な両輪だった。これまでも、これからも、ずっとそうだった。だからこの国にやってきた。たった一年で、諦めることなんかない。まだ何もしていない。何もみていない。