Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

パリ・オペラ座バレエ『ダフニスとクロエ』 DAPHNIS ET CHLOÉ/ MILLEPIED

 ついに渡仏一年、ようやくパリ・オペラ座バレエ団の舞台を見てきた。だってオペラ座を観るだなんて、どう考えても『観光客』の証みたいで敬遠しまくっていたのだ。前にも書いたけれど、あまりに自分にとっては「至高の芸術」すぎて、ああ、今じゃない、フランスに何もかも拒否され、殺意すら抱き、うなだれまくっている今、そんな崇高なものに手を出してはいけない、今行くべき時ではない・・・、と、思い込んでいたのもある。で、「今」がその時なのかどうかまったく分からないけれど、とりあえず秋からの新監督ベンジャマンのお披露目もあって、この「ダフニスとクロエ」は新時代の判断の意味でも見ておいた方がいいなあ、と思って、一番安いカテゴリーの15ユーロの席をわざわざガルニエ宮までいって、購入したわけである。

 ルフェーヴェルのあとのベンジャマンその人については前回記事で既に触れているので、今回は初の「オペラ・バスティーユ」劇場と、作品感想を中心とする。

 まず私が買った最も安い、ネットでは手に入らない15ユーロの席は、結論からして絶対にお勧めできない。東京上野文化会館の5階より左右よりひどい。そして周囲はフランス人である。何と言ってもマナー悪すぎ。シャメは撮りまくるわ、もの食いまくるわ、立見席券の人たちは、「あそこが空いてたから先座っちゃった。あっちのほうが正面でよく見えるんじゃない?」とか例の如く早口で得意の論を並べ立て、移動しまくって、本来その席のチケットを持っていた人を追い出している始末。おい、セキュリティーとか案内係はどこなんだ?この庶民感は一体何なんだ?真夏のように日差しの強い6月の日曜のマチネの、6階席(日本でいう7階)なんてまともに見る人間の席じゃない場所で、しかも公演最終日だから何でも許されているのか??おいっ。しかもみんなジーパンにノースリーブである。下手にオシャレとかしている人はいない。

 隣には、何組か巡り巡って、後半からは若くて細い男性2人連れが座った。おお、カッコいい。ダンサーカップルか?私はこっちのほうがよっぽど眼の保養になった。

 オペラ・バスティーユはガルニエ宮と違って、造りは至ってシンプルそのもの。豪華な飾り立てもなければ、まるでバランシンのバレエを体現したかのような、シャープで無駄をそぎ落とした、鑑賞のための現代空間。それはそれで気持ちいい。

 さて前半はバランシン作品。1947年振付のLE PALAIS DE CRISTAL『水晶宮』、ビゼーの音楽と、クリスチャン・ラクロワによる控え目な衣装。配役表なんて便利なものは既に姿を消し、全てネット上(みんなスマホでその場で見られるジャン)なので、チェックしてこなかった。うう・・カール・パケットしか分からないよ・・・。

 バランシンらしい、比較的釣り合いのとれた小作品。なるほど~、パリオペが踊るとこうなるのか。NYCBなら何度も観ているけれど何が違うって、決定的なのは「直線的な空気の捉え方」である。たぶん団員達の体型によるところが大きい。バランシン作品は、あ~、おんなじようなネタが続いてアンニュイだな~と思う時と、マノンだのロミジュリだの英国式=ケネス・マクミランに代表される「ドラマティックバレエ」を観過ぎて少々胸やけがしている時なんかは、スカッとお口直しによろしい。サイダーみたいなもんである。(要はバランスなんだ)

 さて肝心のダフニスとクロエ。英国バーミンガムロイヤルバレエがやった時はちゃんと観ましたよ。フレデリック・アシュトン版で。なんかやたらと劇画チックというか背景とかも拘っているやつです。ラベルのうつくし~い曲に載せて、ギリシャを舞台に恋人たちのイニシエーションが描かれている。


Daphnis et Chloé - New work by Benjamin Millepied ...

 朝のダンスレッスンの疲れで幕間にがっつり眠ってしまったのだけれど、まず良かったのが、オーケストラの音の素晴らしさ!これは是非特筆しておくべき点。

Chœur et Orchestre de l’Opéra national de Paris
Philippe Jordan Direction musicale Alessandro Di Stefano Chef du Choeu 

パリ国立オペラのオーケストラと合唱団:指揮:フィリップ・ジョルダン

となっている。もう東京上野会館で聞かされる最初の音の外れた○×だとか悪夢のような▼△だとかを聞かなくて済む・・・某Tシンフォニーよ・・・。(これ以上はかけない。そう、世の中には書けないこともあるのだ。)

 セットはモダン。凄く前衛というわけでもないけれど、英国バーミンガムみたいな物語性を前面に押し出した感じじゃなくあくまでダンサー、踊りが主役だから。

本日の主役陣は以下。

DAPHNIS Marc Moreau
CHLOÉ Amandine Albisson
DORCON Allister Madin
LYCEION Léonore Baulac
BRYAXIS Fabien Revillion

ダフニスは初見の彼だったが、言うことないな~。しっかりとまとめてきている。

海賊やユニゾンのシーンの振付が非常に「切れ」て、見どころとなっていたし、音楽だけで眠くなっちゃう人の多いこの作品をここまでしっかり引っ張れる能力。私としては今日、同い年のベンジャマンの船出に、ニジュウマルをつけてあげたい。頑張れ!新生パリ・オペラ座よ。

★今期も残るところ2作品。次回パリ・オペラ座鑑賞は6月29日、ジェローム・ロビンズ、アレクセイ・ラトマンスキーの小作品を初のガルニエ宮で鑑賞。

お楽しみに。