Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

パリダンサー図鑑(6)W杯フランス代表選手じゃないよ!Lucas Defayolle/ルーカス・ドゥファイヨル

 Lucas Defayolle :ルーカス・ドゥファイヨル

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 たぶんまだ20代後半。おしゃれでカッコ良くて、わりと細身の今をときめくサッカー選手、フランス代表、レギュラー?控え?・・・違います、れっきとしたダンサー、コレオグラファー、国家ダンス教師!!しかもこの若さで2011年、彼は自らが芸術監督、振付師、兼ダンサーである自分の会社を設立。つまり、カンパニー所属ダンサーを抱えたシャチョーでもある。パリの熊哲か?(注:解説は省略します)

 なんかちゃらちゃらしてたり、両脇マネージャーに固められて、業界っぽい人だったらどうしよう、とか思ってましたが・・・爽やかなタンクトップに大学生が持つみたいなナップザックひとつで登場!!なんか、フツ―の元サッカー少年27歳って感じである(年齢等はあくまで筆者の想像)

 クラスは火曜と土曜にそれぞれ別のスタジオで持っていて、わたしは土曜は別のクラスと重なり行けないので、なんとか機会を狙っていた。たまたま休講となった日、念願かなって、初ルーカス体験。

 そしてワタクシ、どぎもを抜かれ、涙ちょちょぎれ、カンドーのあまり殆ど何を踊ったのか、深夜過ぎまで興奮して眠れず、まったく覚えていない始末。

 一言で言う。彼が造っているのは「ダンス」ではなく「宇宙」だった・・・・・。

 軽くプロフィール。ルーカスは17歳で故郷のランスでジャズダンスを始めた。そこで師、Emilie Juppinと出会い、ダンスを職業とすることを胸に決める。2007年からの3年間、彼はご存じ、大御所パリのリック・アダムスの養成所へ。2010年にNYへ渡り、マーサ・グラハムの学校で、コンテンポラリーを学ぶ。「カンパニー」の単語もあり、という記述があり、もしかしたらグラハムカンパニーのほうでも踊っていたかもしれない。また、同様にアルビン・エイリースクールでも学んでいる。(こちらも現代、モダンテクニックの総本山である)

En 2011, il monte sa compagnie LDDC 2011年、彼のカンパニーであるLDDC(LUCAS DEFAYOLLE DANCE COMPANY:ルーカス・ドゥファイヨル・ダンス・カンパニー)を設立。2012年、国家ダンス教師資格を取得。2013年、クラスを受け持ち始める。つまり今年は二年目。

 彼の公式サイトによると、昨年9月、初めてのカンパニー公演を成功に終わらせた。タイトルは「SPECTACLE LDDC - RAINBOW WARRIOR 」。今年はその続編があるらしい。下記はルーカス本人のインタビュー映像。

 


interview Lucas Defayolle - YouTube

 初めてクラスに出た時、やばい、カンパニーのプロフェッショナルのダンサーばっかだ、どうしよう、と思ったけれど、まあみんな衣装(きているレッスン着)が派手なのと女性がけっこう筋肉ムキムキなだけだから、そこで萎縮することはない(笑)ただものすごく意識のある人たちが多い気がする。単にファン、みたいな人は(これまでのクラスだとたいてい数名は居たが)一人もいない。ルーカスは、クラスをやっている、というより、とにかく2時間、「我々の宇宙を構築している」という感じがある。喋っている言語がフランス語か、英語か、とか結構そういうことが他の先生では気になったりしたけれど、この人の場合、そういう次元をぶっ飛び『ダンサー語』でクラスが進行してゆく。振りがある程度入った段階で、(これはファブリスもそうだったのだけれど)「これ(やって見せる)とこれ(同様に)、何が違う?」といって、生徒に考えさせようとする。単なるカウントの取り方の違いなら、素人でも直せる。そうでなく、3次元的な、空間の引き裂き方のテンポ、呼吸、どこで息を吸ったか。それをすごく真剣に、(そう、『真剣』というまなざしが、これほど似合うフランス人を初めて見た)ひとりひとりの生徒に向かって、語りかける。

 彼の振りの特徴は、モダンのベースが充分にあるところだ。わけのわからない、小さなコンテンポラリーに閉じこもるのではなく、――経歴を見ても分かるように、Nyのアルヴィン・エイリー、グラハムという2大カンパニーの2大テクニックを、かれは恐ろしいほど、(ほとんど完璧に)身につけている。そのベースがあるから、スローであっても、5e element (フィフスエレメント!)のようなちょっと怪しいノリの曲であっても、全て、「彼の宇宙」として再構成し、一瞬のごまかしも借りものの衣装もなく、身体化することができる。思うに、彼はあまり、「振付」をしているとは思っていないのではないのではないか。思考の身体言語化、彼の宇宙の視覚化。それを、自らの習得したテクニックを最大限に使って、(彼はほとんど息を切らさない)ダイナミックに記号化することができる。なんというか、理系頭脳の(もちろんマックブック利用者、音楽もそこからつなぐ)これまで紹介したダンサーとはまた異なるタレントを持ち合わせた、注目ダンサー。

 あまりのカンドーに、翌週別のスタジオのプロクラスに出てみた。こっちのクラスは説明がなくて、うんと早くてついていくのが大変と周囲の生徒に脅されていたから、いちおう本人にこっちで継続しても構わないか、クラスが終わった後訊いてみた。「サ・マルシュ」、それって、キッチンで湯沸かし器が壊れて動かなかったんだけど「あ、こっちならサ・マルシュ(使えるよ!)」とか、つっこんだクレジットカードがようやく「サ・マルシュ」(オッケー、今、作動した)とか、そういう機械的・物質的状況における使用印象が強かった。そこへきて「私」(一応哺乳類にカテゴライズされる生物)が「サ・マルシュ」(機動可能)という。初めて聞くが、この人に言われると納得せざるを得ない「サ・マルシュ」(うん、いいよ)なのであった。

 7月は2週にわたり、スタジオで彼のスタージュ(研修)が組まれ、その後彼のカンパニーの研修が一週間。参加予定。


LDDC - Rainbow Warrior - Théâtre De Ménilmontant ...


Cours de Modern'jazz avec Lucas Defayolle ...