Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

Michaël Cassan:イケメンダンサー、ミカエル・カッサンのモダンジャズにノックダウン

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 ヤニス・マーシャル3日間は、特別企画を名打ったが個人的には「夏のヤニス祭り」でしかなかった。もっと深い部分でダンスを追求しなければパリに居る意味がない。7月中に(スタジオがバカンスに入る前までに)探したかった。

 幾つかのスタイルのダンス、教師のうち、モデルばりイケメン:ミカエル、彼の師であるヴァンサンについては、既にパリダンサー図鑑で取り上げた。二人ともコンテ寄り作品が多く、またフォーメーション(教師養成コース)担当のため固定生徒がおり、一般クラスの雰囲気がいまいちか掴みにくかった。試しにヴァンサンの中級レベルに出たら物足りなくて、がっつんがつんにストリートジャズにのめっていた私はもっと動きたいと思ってモダン系は敢えて外していたのだ。

 ところがヤニス最終日。教室が、ちょうどミカエルのモダンジャズクラスの後だ。10分前には着替えて廊下で荷物抱えて待っていた私は、最後のコレ(振付)をみて、思わず涙がかあっと込み上げた。すごい一体感。生徒に教師が何人か混じっているからその人たちが前方で引っ張っているのもあるのだが、殆ど舞台のリハをみているのかと思ったぐらい。で、気づいたら私はその場で、拍手してた。ふっと横を見たら横にヤニスが立って見ていた。後ろを見たら、他の生徒たちもみんな廊下からガラス越しに拍手を送った。それほどエモーショナル(感動的)な作品だった。

 ヤニスがマンチェスターへ去りし翌日の金曜。(ちなみに彼は今ツイッターで「ああん、もう英国、大・大・大好き~~❤」と悶えている。やはり合うんだろうな~)昼にミカエルのアドバンス(一番上)のクラスに出てみた。ここより上のレベルはなく、ここで満足できなければ諦めもつくし、プロ生徒たちと教師も出てきているだろうと踏んだ。その顔ぶれと彼らの解釈もみておきたかった。足の踏み場もないんだろう――と思って行ったら、夜の半分ぐらい、少人数の「アドバンス」クラスである。

 最初の50分はジャズというよりモダン~コンテに近い基礎トレーニング。床での柔軟まで。その後40分がコレで、期待はしていなかったものの、ちょうど昨夜の中級クラスで窓越しに観た作品を。曲が中盤から一気に感情を爆発させ、ジャンプが続く。宙に光を得た明るさへ突き進んでいく。最後は空に一つの流星、ひとりの生徒がそれを見つけ、全員が走り寄って、落ちていくのを眺める――というコンセプト。

 私はその落ちてゆく星が、消えた命、それでもこの宇宙の中で綿々とつづいていく、なにかわたしたちのしらないおっきな力に守られているんだ、という気がして――、隣に立って見ていたヤニスの横顔をちらりと、盗み見たのだった。

 恐るべしミカエル、教師として、コレオグラファーとしてのドラマチックな実力!!――わたしはその日、昼のアドバンスクラスを終えると、再び、夜の最終クラス(こちらは中級)を受けにバスティーユへ。あの曲のタイトルも分からないまま帰ってきてしまったし、もう一度、同じレッスンをやることになっても全然構わない。

 驚いたのは、なんとミカエル、中級には中級の、全く違う90分を提供しているじゃありませんか!どうせおなじレッスンだろうとくくっていた私。中級レベルの顔ぶれ、身体レベルに合わせて、最初のアップは全く違うものだったし、しかもその後のコレまで違う。さすがプロ教師。

 曲はこちら、"The Curse" Agnes OBEL 『呪い』という、いかにもコンテ系の先生が好みそうな、怖くておそろしい歌詞。彼はこのベースに流れる「1・2・3 1・2・3」という低いテンポの繰り返しを「よく聞いて」と言って、全体を3パートに分けて40分以内で振りつけた。

 後半、全員が集まってからは細かい手の動作、見た目は速いけれど全部糸のように繋がっていて最後まで一筆書きのように動けてしまう。それよりも難しいのは最初の4つがいきなりフリー演技で始まること、あとは殆どコンテ寄りの独特な緩急のつけ具合。飛ぶ、床に突っ伏す、回る、走る、首の角度一つとっても「カッコよく見せるための踊り」じゃなく「意味を持たせた踊り」の全てが一部であるということ。

 先週、彼がフランスはスペイン国境近くの山脈ペルビニャンで一週間ダンスサマーキャンプ時の映像があるので、アップ。 


"The Curse" Agnes OBEL / Choreography by ...

――The snake which cannot cast its skin has to die. As well the minds which are prevented from changing their opinions; they cease to be mind. Nietzsche 

<脱皮できないと、蛇は滅びる。意見を変えることを妨げられた意識も同様:

 それは精神でなくなる>―― 

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