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Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

Book『House of Day, House of Night /昼の家、夜の家』 オルガ・トカルチュク Olga Tokarczuk

 ミカエルのクラスで使った曲「The Curse 」- - Agnes OBEL- - たまたまここ数日、ダンスの行き帰りに持ち歩いて読んでいた本に、イメージがぴったりでビックリ。頭の中で映画化し(勝手にするな)OpeningSong及び挿入歌に決定し、ituneでリピート再生しながら読む。


Agnes Obel - The Curse (Berlin Live Session ...

 ポーランドの女性作家・Olga Tokarczuk(オルガ・トカルチュク)さん:本人HP=OLGA TOKARCZUK という人の『House of Day, House of Night』。情報ソースはこちら、英国オブザーバー紙のBookReview。

Observer review: House of Day, House of Night by Olga Torkarczuk | Books | The Observer

 1962年生まれのポーランド作家。ワルシャワ大学で心理学を専攻のち、セラピストとして働く。経験は作品に色濃く反映されていると見られ、93年作家デビュー、「Bieguni」(英語版:Runnurs)が2008年NikeAwardナイキ、と読むのかと思ったら、ニケと発音する権威ある文学賞)を受賞。ポーランドで最も成功している女性作家。神話的要素が強くエッセイも手掛ける。

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 本作は4作目で、その後に商業的に成功した作品のほうが遥かに多いのだけれど、興味を持ったのはこれが日本で昨年白水社から翻訳出版されているそうだ。訳者は小椋彩さんという方。別に面識があるわけではない。が外国に住んでみると、こんな大偉業を成し遂げた方に、ちゃんとフルネームを表記しささやかな敬意を表さずにはいられない。だってポーランド語からの、一冊の本の、翻訳ですよ!私なんてロシア語学ぶのすらひいひい言ってたのに・・・。

 さて内容は、チェコの小さな山村の町に移り住んだ女性が主人公となって、そこでの日々を記している、それが「土地の記憶」の語りに繋がってゆく。ここは「国境の町」とされていて、戦争、占領によって領土がかつて幾度となく変更を余儀なくされ、ドイツ人の居住地がある断片の町、という。その町の歴史への踏み込み方が面白い。小さな章立てが幾つも連なっていて、日常生活における――隣人、ラジオ、夢(このモチーフはなんども出てくる。タイトル「夜の家」=人間の意識下、を象徴する部分でもある)、キノコ(「私」は生まれ変わったらキノコになりたいそうだ)、季節のレシピと森の様子、彗星、国境、聖人伝、ケーキ、家、等々。

 「言葉」という章では「言葉と事象から生まれるのは、象徴。まるでキノコと白樺のようである。事象の上に、言葉が生える。そして初めて意味を持つ」「景色の中でそれは成長する。人は言葉である。土地に生き、人は現実となる」(英語版から筆者が主要部のみ訳)多和田葉子好きにはたまらない、止まらない世界。おススメ。

 「『旅では自分のことしか考えなくなる。「私」としか顔を合わせない。まるで「私」こそが旅の主目的であるように。でもじぶんの家の中では、「私」とはただ存在するのみでしょう。時刻表みたいなものにやっきになることもないし、闘ったりする必要がない。「私」に構わない場所で、人は最も多くのものが見えるようになるわ』――とマルタがいうので私は驚いた」

 なんてあたり、書き手の知性、深い味わいを感じる一文だった。

 最後に遊び心でカバー比較。左がUK版(英語・しかもグランタだった)、右がアマゾンで見つけた仏語版。印象が天と地ほどの差なんですが・・・仏語版、有無を言わさずエスプリねじ込んでおフランス風に変えてる気が・・・。

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