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Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

Tamara Rojo/バレエダンサー:タマラ・ロホ(イングリッシュ・ナショナルバレエ監督)レクサスCMなど

 バレリーナ・バレエダンサーの個人サイトは時々チェックしている。シンプルで、洗練されていて、トップページを見ただけで、そのダンサー自身の踊りと経歴が瞬時に反映されている、と感じられるようなものしかみたくない。踊りが素晴らしくて興味を持ったり、一流とされているダンサーであっても、サイトがお粗末だったりするとがっかりさせられる。逆にたいしてマークしていなかったダンサーが、こうした場所できちんと情報発信しファンや観客を掴んでいるのをみると、これはこれで現代の手法なのだと、最近納得するようになった。10年前なら「あんた暇だね」「その前に練習しろ」で済んだ話だが、2014年の現代において、サイトは世界を越えてその人間の「生き方」までをも象徴するツールだ。発信する側の「利用能力」さえも人々に図られている。

 とはいえおおよそ、一流ダンサーともなればサイトもまともで(運営は任せているのだろうけれど)大御所:タマラ・ロホとディアナ・ヴィシニョーワは、さすがの出来。タマラ・ロホ http://www.tamara-rojo.com/ は1974年生まれの40歳、スペイン出身、英国ロイヤルを経て2013年よりイングリッシュ・ナショナルバレエ監督。ヴィシニョーワhttp://www.vishneva.ru/eng/index.htm は1976年生まれの38歳、ロシア出身のAマリインスキー劇場バレエのダンサー。両者ともよく世界バレエフェスなどで日本に来日し、また世界の名だたる賞を総なめにした二人、顔も名前もおなじみだろう。

 今日はタマラ・ロホについて。

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 スペインのバレエ学校で学んだのち、1994年のパリ国際コンクールで金賞と特別賞、96年にはスコティッシュバレエ、97年イングリッシュ・ナショナルバレエ、翌年にプリンシパル。2000年にダーシーバッセルの代役でロイヤルバレエ団でジゼルを踊り、その年プリンシパルとして移籍。13年間所属した。カルロス・アコスタとのパートナーシップなどで知られ、海外のバレエ団へのゲスト出演も多数。

 英国ロイヤル時代来日するたび、東京の上野文化会館に通った。ロホが出演しない日に行くと、開場時間少し前ぐらいに通用口あたりから彼女が普段着でひょろっと出てきて、上野の坂を降りて行く姿とすれ違った。すっごく小柄で、色白で、近くでみるとわりにぽっちゃりとしていて、「え、今の、ロホ???」と、何度か驚いた。舞台上でもくっきりと分かる、髪が黒くて眼がぱっちりと意志的、強さを感じさせる。私が最初にロホを意識したのはインタビュー、その考え方やダンサーとしての発言に触発されて。その後、ほんものの舞台で圧倒される、という逆パターンを辿った唯一の人物。

 ロホは若いころからわりとハッキリものをいうタイプで(というとシルヴィ・ギエム様しか、と思っていたが)何に自分が憧れ、どういうものを目指しているか、何を嫌悪し、この世で憎むべきものは何か、といったことを都度、言葉にしてきた人だ。ダンサーの中には大きいバレエ団に所属している安定感からか「自分の言葉でビジョンを語れない」人もいる。ロホは若い時から、全然違った。

 技術的にはグーグル検索で「ロホ」と打つと、すぐ「フェッテ」(超回転)と出てくるほど、超絶技巧が有名。スペイン出身ということもあってドン・キホーテのおきゃんな主役キトリなどでよく海外に客演に呼ばれていたが、彼女は自分でも言っているように「ドラマティック・バレエ」にこそ、バレエの真髄を感じている。だからアシュトン系の振付作品よりは「ロミオとジュリエット」や「マノン」のような劇的で人間の闇や内面をえぐり出すようなバレエを、その超絶的な技と強靭な身体を使って表現すべく努めてきた。実際、ロミジュリとマノンはロイヤル時代の彼女の真骨頂2作品だと私は思っている。

 早い段階から彼女はゆくゆくは、どこかバレエ団の芸術監督への意志を公表していた。そのため、ロイヤルのプリンシパルという多忙な身でありながら、母国スペイン・マドリードのレイ・ファン・カルロス大学というところで、舞踊学と舞台芸術修士号を取得中だ、と語っているさなかの記事を2000年代後半に読んだことがある。ところが母国スペインでは一足先に、パリオペラ座を引退したジョゼ・マルティネスがナチョの後を受けてスペイン国立バレエの監督に就任済み、ABTのアンヘル・コレーラは姉とともに自身のバレエ団を創って孤軍奮闘していたが、それも挫折してしまった。ロホはロイヤル監督に応募はしていたものの、古巣イングリッシュ・ナショナル・バレエのディレクターとして2013年着任。しかもロイヤルから人気バレリーナ:アリーナ・コジョカルを引き抜いたとあって話題騒然、只今大注目株のENBとなってしまった。

 上記写真はENB(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)公式HPから。ロホの麗しい現役時代の舞台写真は幾つもある。でもこれを見た時――ああ、40歳らしい、一バレエ団の芸術監督として、風格と品性をたずさえた、なんといい写真なのだろう――と思わずに居られなかったのだ。

 ロホはじめての方に、こちらがおススメ。実はレクサスのCMに出ている、あの筋肉ムキムキの、回る強靭おねえさんが、ロホなのだ!これは 'Poise' という車種のボディーの強さと、ダイナミックなハンドリングを、ロホの回転速度Upに合わせて打ち出した広告。もうAmazingというより仕方ないが、更に!レクサス・ヨーロッパのyoutubeではロホ自身が撮影について語るinterview with Rojoも合わせてお楽しみください。


'POISE' - AMAZING IN MOTION - YouTube

 STRENGTH IN MOTION - INTERVIEW WITH ...

 最後に。BBCの番組で、タマラロホたっぷりと監督業について語っています。かつてあの妖麗な黒鳥やマノンを踊ったダンサーと思えないほど、落ちついたイギリス英語式の区切った発音の仕方や、むしろ愛らしい感じの小さな声。BBCのサイトでは24分のフルバージョンがあったのだが、youtubeでアップできたのは短い3分バージョン。彼女のダンサーとしての知性を伺いしることができる映像。2014年3月放映。


Tamara Rojo on the 'joy ' of ballet dancing - YouTube

※イングリッシュ・ナショナル・バレエHPはこちら Home | English National Ballet