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Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ・第3シリーズ 第16話/『第二の血痕』THE SECOND STAIN

 外交文書紛失事件。同類に「海軍条約事件」もありました。私的にはこのタイプの「外交インテリジェンスもの」はツボ命中。歴史がらみの「国家を揺るがすレベル」こそ推理小説の醍醐味と、勝手に(笑)

【ストーリー要約】大英帝国首相と欧州担当大臣みずからベーカー街へ登場。ヨーロッパ中を巻き込みかねない重大な秘密書簡の紛失事件。そこへロンドンで諜報活動を行い書簡を入手した疑いのルーカスが殺害された。

   

 グラナダ版の中で、特に映像化が効果的だった例ではないか。

 格調高い音楽が有効的に使われた冒頭と最終部。ルーカスを訪れようとするホームズを思いとどまらせた「小活躍」ぶりを見せるワトスン、味出して来ましたねえ。夜のロンドン、いつもながらレストレード警部とのやり取りも今回は若干コメディタッチ、床に這いつくばる執念のホームズ、ラスト、ポーカーフェイスのホームズがとるポーズが有名だね。

 一つの書簡が世界大戦を引き起こす原因になるというストーリーは「海軍条約事件」に同じ。英国の国際関係の背景を思えば当時としては斬新かつ旬なネタだろう。

 最初に出てくる首相官邸の門、質素で英国らしくていいですねえ。

 ストーリーは、前作(プライオリ・スクール)学園モノから一転、国家の大事レベルで、巧みな展開。関係がありそうに見えて実は無関係――の2つの事件が、実は、手掛かりを得て真相へ、というあらあ、頭脳プレーのオトナな結末。

 正典ではホームズはレストレイド警部と連絡を取り合っていた。でもグラナダ版では途中で「やあやあホームズ君」と声をかけられちゃうまではホームズ一派は別行動。

 夫人=「女」だ。自分が上流階級の女と気づかせず、警官と世間話したり自宅で演技できたりするのにね。究極大事な場面では何の役にも立たない。やっぱ所詮「女」なのさ、というドイル作品に一票!

 タイトルだけではぱっとしないこのハナシ、映像化はいくつかの変更点を除いては正典忠実、テンポよく見せどころのある作品のひとつ。彼らのスーツの着こなしも注目。イライラするホームズにハドソンさんが紅茶を持ってくるシーンも息があってるし。(ここ第3シリーズからハドソンさんの活躍と茶目っけが目立ってくる)

 ホームズとワトスンのやり取りが、あうんの呼吸。

ワ:「きみが言っていた三人の一人はエドアルド・ルーカスかい」ホ:「そうだ」「ゴドルフィン街かい」「そうだ」「もう会えないよ」「なぜ」「昨夜殺された」でホームズが部屋に戻ってくる。主導権はワトスンにあり。

ワ:「執事は休みを取っていて留守だった」「家政婦は3階で熟睡していて何も聞いてない」ホ:「いつもそうだ」⇒二人の呼吸のよさを感じさせる。

 ラストの一言 ホ:「我々にも外交上の秘密がありましてな」。

ホームズは警察のためでもなく金や名誉のためでもないから、犯人をつるしあげることが目的なんじゃない。誰かに「ゆるし」を与える人間的側面も持ち合わせていて、それは公表すれば彼の「ルール」に反するから、なんだろうけれど。後半に行けばいくほどこうした部分が彼の中で深まっていく気もする。ワトソンという相棒の存在が、彼に影響していると考えるのはちとファン的心理が働き過ぎかな?