Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ第4シリーズ26話:The hound of the Baskervilles『パスカヴィルの犬』

 説明不要の名作長編、The hound of the Baskervilles『パスカヴィルの犬』。4作の長編中、正典ではこれのみ2部構成をとっていない。が難しいことはさておきまずはグラナダ版を楽しむことに。余談ですが、カンバーバッチ主演のBBC版は、UKアマゾンでDVD購入して鑑賞済。試しに仏語吹き替えでホームズ観たあの衝撃と言ったら―――合わないのなんのって・・・(笑)はじめて「ベーカーストリート・211B」のセリフをフランス語できいた時は・・・ぎょっとした。

 ホームズものの中では舞台となったダートムアの景観が好まれ最も映像化された作品だそう。グラナダ版映像化が1988年、BBC版が2012年。後者は設定を現代に置き換え、大胆なネタ替えが特徴的だった。

左は1902年の初版表紙、右がグラナダ版。

The Hound of the Baskervilles 

 

 ホームズが潜伏したという、グリムズポンドの円状巨石列柱

 ワトスン博士が大活躍。ホームズの代わりに現場で大活躍だけれどシャーロキアンの間では「肝心のホームズ様登場回数が少ない」と不評の回。ファンならずともワトスン「ホームズさえいてくれれば!一体何をしてるんだ!」の叫びにうなづくばかり――101分のうちやっと現場に登場していつものノリになってくるのが76分ごろ!

 正典との違いが多い。グラナダ版は資金切れで『四人の署名』の制作時のような大規模なロケが組めなかったという裏事情があった。またレストレード警部が登場するはずが出てこない。なんと、警部役のコリンさんが、舞台公演中だったのだそう。

*私的結論から――長い。集中力がキレた。このネタで101分引っ張るのは長すぎる。

*冒頭――ベーカー街の朝。忘れ物のステッキの持ち主について二人の推理のし合いっこ。お洒落な調度品をじっくり観察。銀製のコーヒーポットが素敵。
*モーティマ先生、ハンティング帽をかぶった野外の姿の方が、英国男児という感じで「いい男度」が増す。
*一流ホテルでの4人の朝食風景。ホームズ&ワトソンもトップハットに黒のスーツ、紳士の身なりでしゃんとしております。手紙に使われた紙質、封筒、インクについて考察。私、文具マニアなので興味深いシーン。今回は使われなかったけれど、ホームズものといえば象徴的な封蝋についてなど、今度テーマを設けてじっくり書きたい。

*使用された新聞は「タイムズ」の社説。まあ一流紙ですな。

*殺風景なダートムアへ列車で。いかにもといった英国の荒野が広がる。バスカヴィルの御屋敷までが無駄に長い。出迎えたバリモア卿もひと癖ありそうな感じで。お屋敷は薄暗く、光がなく、重々しく、これぞ「THEヴィクトリア朝」!って感じ。フランスとは全く毛並みが違いますなあ。ビリヤードは紳士のたしなみか。

*村の郵便局のシーンで何かよからぬ予感は視聴者に与えてはいるものの――ハイ、やっと半分をすぎ、76分ごろ真打登場。有名な「ホームズ、アジトにワトスンを招き、手料理振る舞うも・・・」のシーン(笑)

*翌朝、朝食シーン。ホームズ堂々たる態度とモノ言いが痛快で、ファンでなくとも「いよっ、待ってました!」と言いたくなるさ。私なんてすっかり集中力切れて爪切ったりしてたぐらいだからねえ・・・・。このシーンが調度品の美しさに見惚れて凄く好きです。

 

 

*ラストは「やはり女って、、、、ばかなんだ・・・」のひとことに尽きた・・・。グラナダ版が正典に比較的忠実であったが、さすがに私は国家を揺るがすサスペンスタッチが好きなので田舎で101分引っ張るネタではないよなあ、と思ってしまう。個人的好みの問題です。BBC版がおもいっきり大胆に現代アレンジを加えて正典無視で別のトリックを生み出していたので、別物語として面白く、UKのCD朗読付きスクリプトテキストまで買って細部を確認してしまった(笑)これは全く別の話になってます。

*なんだかこき下ろしてるみたいですが、グラナダ版ラストシーンは良かった!ホームズがベーカー街で馬車の手綱を引いて「コベント・ガーデンで『ユグノー教徒』のチケットがあるんだ。その前に軽く『マルティーニ』で食事しよう」ってところ。「ユグノー教徒」は、1572年の聖バルトロマイ祭の日に起こったユグノー教徒の大虐殺(新教徒による旧教徒の虐殺)を題材にした作品で、19世紀でももっとも大きな成功を収めたドイツオペラのひとつ。作曲者のマイアベーアも、当時は最高の作曲家ともてはやされたとのこと。ホームズからワトソンへの今回の危険な仕事のお礼のつもりなんだろうけど(なんてったって手料理は食べてもらえなかったからね)紳士二人、劇場に居る姿も絵になるだろうなあ、と。


Sherlock Holmes : The Hound of the Baskervilles ...

 最後はチャイコフスキーのバイオリンおまけ。Granada's TV series 'Sherlock Holmes'. The music is Tchaikowsky's Melodie (Souvenir d'un lieu cher), Op. 42 No. 3 performed by Josef Hassid.

Cherished Memories of Jeremy Brett - YouTube

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