Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ第5シリーズ第30話The Adventure of Shoscombe Old Place ショスコム荘

 56短編小説の最後、『事件簿』収録作品。英「ストランド・マガジン」1927年4月号、コナンドイルが執筆した最後の作品。

 依頼主はジョン・メイソン。ショスコム荘に住むロバート卿に雇われた調教主任。事件はそのロバート卿が・・・というところから始まる。これだけ頭に入れておけばok!

  英国の個人ブログ More Man than Philosopher: The Case-Book of Sherlock Holmes: Shoscombe Old Place (Patrick Lau 1991) がグラナダホームズ登場役者等についてデータベース化しており便利。今回は言わずと知れた、若き日のジュード・ロウ。(FOTO左)2009年の映画版ホームズではワトソンを演じている。

Jude Law in Sherlock Holmes: Shoscombe Old Place (film still from Sherlock Holmes: Shoscombe Old Place) 

 *ベイカー211B。ホームズのいつもながらに真剣な横顔テイク。

 ワトソンは『軍人(傷痍)年金』の半分を競馬につぎ込んでいるのね。このシーンでは、食卓の「エッグスタンド」と素敵な刺繍織の「エッグカバー」に大注目。ハドソンさんの趣味?さすがの英国夫人のビクトリアンセンス。

*本日のワトソン氏の購読新聞は「デイリーテレグラフ:TheDaily Telegraph 」紙。1855年創刊の大衆紙ですな。「タイムズ」創設の3年前。誰が買ってくるの?

*7分遅れでメイスンさんがやってきたシーン、ホームズの仕事机の上にかくも美しい「ブロッター」(半円形のインク吸い取り器)が。英国高級老舗メーカーだとレザースミスなど有名ですが、ああっ。あれはどこの何っ。文具フェチの血が騒ぐ。

*毎度ティーポットも気になって。ホームズ博物館に展示されているんだっけ?2000年半ばに実は行っているのだが、こんなにはまると思ってなくて素通りした。

*登場する名馬の名は「プリンス」。私が馬主になるなら当然「ジェレミー」で決まりなのに。

 

*お伴は犬のジャスパー。絵になるホームズと犬とワトソン・・・。今回のワトソンのベージュのコートは、品が良くてひと目で気にいってしまった。このホームズ帽子は、正式名称はなんていうものだっけ。

*いっちょ演技してジャスパーを借りた店に戻ると、さも田舎風のオヤジが腕によりをかけて出してくれたスープに・・・二人のアイコンタクトが何とも(笑)「深い沼だ。濁っていて底がない」はて事件のことか、スープのことか。

 *ホームズたちは「ビール」もたしなむんだ。イギリスだから当然だけどホームズ「ビール」って何飲むの??ある回では「この店のおススメをもらおうか」って言ってたけど、当時の主流とか、こうした田舎の店で飲む銘柄って(ホームズクラスの人間が、という意味で)どういうものだったんだろう。

*なんて美しい立ち姿、秋のカレンダーかデスクトップにしたい・・・したい、と日本語で打ったら「死体」に変換された。もうホームズ中毒まっしぐらだ(笑)

*「もし、かも、ばかりでは状況証拠でしかあり得ない!!」とワトソンに強く言うホームズの苛立ちのシーンがいい。つまり確実性に欠けるってこと。詰めの一手がない、と。

*「◎◎◎で、死者を蘇らせるのは無理だ」いよいよトリック解きにかかるきっかけのセリフだけれど今ふと思った。ホームズって全然「ハードボイルドじゃない」!!

 なにを今さら、というかも知れない。実はワタクシ白状しますと、昔っからハードボイルド小説の必要以上の「カッコつけ」が苦手で。主人公が本筋と関係ないのに「どう?俺カッコいいでしょ」ムンムンなのが生理的に×××。

 20代の頃はそれでも「これが読めなきゃ世界ブンガク仲間に入れない、頑張れ自分」と努力した。でもダメだったみたい(笑)

 ハードボイルド系:「表舞台に出ない裏方の俺って真の男」感が丸出し・・・やっぱりこれは英国だからなのか、ドイルだからなのか、果てはホームズ、あるいはジェレミーだからなのか、妙な「クセ」がない。ストレートで、スマートで、静かで、「裏でやってる自分が大好き」系の自惚れ無し。

 ――で「死者を」のセリフに戻ると、ハードボイルド系役者ならもっとキザに、俺様セリフを吐かせるはずだ。水戸の印籠登場に匹敵のラスト7分、一番の主役見せどころだ。でもホームズに関しては、単に話のきっかけとしてイングリッシュジョークでさらっと相手の注目をこちらに向けさせるだけで、さっさと本題に入りたくてたまらないわけで、自分のことなんて差し込む余地はまるでない。

*ひとりの人間を追い詰める「責任」もちゃんと背負っているんだろう、と思わせる演技。だからホームズにとって「自分」なんてもん、始めからいないんじゃないか?

*前回「ソア橋」の時、執拗に追及するホームズは「何のためだ」と問い詰められ、筆者コナン・ドイルは彼に「真実だ」と答えさせている。

 そう考えると(一応推理小説ではドンくさいとされねばならぬ)警察の、さらに公式広報局になり下がった犬でしかない新聞やマスコミが「正義」「公正」を自分たちが作っていると大きな顔をしているのも、滑稽なだけ――っていうのは、19世紀から変わっていないのか(笑)

*追記――今回のサブタイトルは「ハドソン夫人の冒険」!(マル秘)ラストのお楽しみ。

*おまけ:2006年の5月22日のグーグルロゴがホームズ!!ショスコム荘で検索したらロシアのサイトで出てきた。この日はコナンドイルの誕生日(1859年)だね。

こちらはロンドンのホームズミュージアム公式紹介ビデオ


The Sherlock Holmes Museum Baker Street (Best ...