Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ第6シリーズ 第40話the Golden Pince-Nez『金縁の鼻眼鏡』

 56短編の34番目。ストランド1904年7月号。『帰還』収録作。正典では私的ランキング上位のストーリーなのだ。ところが!何とワトソン役のエドワードさんが都合により出演できずグラナダ版では兄マイクロフト(役者:チャールズ・グレイさん)とポプキンズ警部(こちらは正典通り)が活躍することに。ストーリーは、ここのところ文学タッチだったのが、久しぶりに推理小説風、50分が謎解きで進んでいくので、まずは珈琲とシガレットを用意して画面の前にGO!

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マイクロフト↓(私、実はBBC版の兄びいき)

   

★★★★ ★4つ高レベル作。これも後に系統立てて一覧でまとめなくては。。。

1)ハドソン夫人、なんでワトソンがいないのか(嵐の夜。風邪が流行っているから)を視聴者に説明。夜半に訪れたポプキンズ警部にいつもはワトソンが作ってくれる「こんな夜には身体が温まるホットレモン」をハドソン夫人に頼む。彼の仕事ぶりに対してはホームズは信頼が厚いからね。ハドソンさん「ワトソン先生がいないからお寂しいんでしょ」とひとこと。

2)兄登場のエピソードによってどういうことが推理しうるか。そう、ホームズの「家族・あるいは生い立ち」に触れられる可能性がある、ということ。なんと衝撃の彼らの父に関する2つの新事実(もちろんグラナダオリジナル)が盛り込まれた。

その1:マイクロフトが現場で鍵穴部の傷のニスを鑑定する時に取り出した「拡大鏡」をみたホームズ。「それは――父上の拡大鏡ですな?」「そうだ」兄は別に大したことじゃないというふうに顔も上げずに答えるのだが、この時ホームズの片方の頬が明らかに一度、大きく引きつり「皮肉だな」とつぶやく。――うわ、みせるなあ、ここの演技!

 「父」は長男であるマイクロフトには期待し、愛情を注ぎ、贔屓にして育てられた。形見としての品を持っているという事実さえ、弟シャーロックは知らなかったのだから――。

その2:有名な「ホームズの名言」などとされているあのセリフ――

『When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth』( 全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる)

 は、マイクロフトによって「昔、父さんによく言われただろう――<上記のセリフ>挿入」という形でホームズに対して語られる。彼の名言とされているフレーズの出どころは、彼らの父の教えだったという衝撃的な新設定!!

*ちなみにホームズが兄に対して常時敬語で接する点が私は気に入っている。二人の関係をよく表している気がして。ホ:「ご覧になりますか」など態度も丁寧。BBC版もそれを踏襲。実際兄は切れ者だし。

3)教授秘書役の若きスミスのしたためたメモ「Abbey Seven thirty」の筆記体の文字が美しすぎる。几帳面で真面目な青年だったと思われる。フランス人って、アルファベット書くのがヘタ。読めない。人格疑う。フランスへ来てそんなことにいら立つとは思わなんだ。かくの如し格調高き英国人の筆記体見た日にゃ――私は今スグ英国に飛んで行きたい。

4)今回はポプキンス警部も優れた観察能力を発揮。マイクロフトもおっとりしているけど頭の中は凄い速さで回転。三人の総合的推理で謎が一点に絞り込まれていく面白みを味わえる、久々のミステリータッチの面白さがある脚本に仕上がっていると思う。アクシデントは、ミステリー内では誰かに必要なものを与えてくれるためにしか起こらないからね(笑)。

5)チョ、ちょっと待ったぁぁぁぁ・・・。今回、もしやマイクロフトの方が上手?ホームズにちょっとしたヒントを与えてやったばかりでなく、最後に「あれはお前がやったことにしとけ」的な手紙をよこしている。正典では全部ホームズがワトソンに謎解きして解説している部分の一部だけれど(しばしば警部に与えてやってしまっている手柄のようなものだ)兄がホームズに与えたもう設定とは・・・ううん、マイクロフト、恐れ入った。

6)「歴史小説家」たるドイルを堪能できる正典のストーリー。後半事実説明が長くなるけれど「そういう時代もあったし、歴史と運命の波に飲み込まれた人々」というのを想像せずにはいられない好短編。ラストの曲もこの秘密のイメージに合う。


The Cardboard Box - YouTube

The Golden Pince Nez - Sherlock Holmes (Brett) Part 1 of 5 - YouTube

   

 *次回いよいよホームズシリーズ最終話!