Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版1―(2) The Adventure of the Dancing Men『踊る人形』

 1984年5月1日英国放映:56短編の27番目。ストランド1903年発表、『帰還』収録作。テーマは『謎の暗号』とその解読

*これは推理小説の元祖ポーの『黄金虫』と共通点がある。

*ホームズ『オレンジの種5つ』(『冒険』収録作)と同様の構成内容になっている。

 1:依頼人の元へ謎のメッセージが届く。2:ホームズ、暗号の解読に成功 3:しかし一歩遅く、依頼人は殺害されてしまう 4:メッセージの送り手はアメリカ出身の犯罪者 5:解読した暗号を利用し加害者を制裁。

  シリーズ人気作。★★★★★

【ストーリー要約】依頼者:地方名士、キュービット氏。妻に届く謎のメッセージ「踊る人形」。妻はおびえるわけを話そうとしない。

1)正典に忠実だが冒頭のみ、妻がメッセージをみておびえる邸宅庭園の風景から。『大草原の小さな家』(これは米国でしょ)『アガサ』など別の古き良き時代の海外ドラマかと見間違う。

2)このシーンはほんの導入で終わり、すぐに221Bの正典の書き出しへ。科学の実験中のホームズ⇒ワトソン「君は南アフリカの株に投資しないんだ」の推理論法。ホームズの勝ち。Quite so. Every problem is absurdly simple when it is explained to you. 聞けばなんだっていう、単純なことなんだからって。(これは犯罪捜査と推理の事を示唆しているよね)でも通帳のありかも昨夜の玉突きも全部バレバレじゃ同居人にするには手ごわ過ぎる。たたみかけるような、得意げなホームズの口からクイーンズイングリッシュが早口でまくしたてられるのだが、全く流れない、気品を保ったままスピードアップしいくのがたまらない。米語と全然違う。ビックリしてしまった。

3)でさらに、ホームズがチアフル(陽気な)わけを彼の推理論法を使って論述せよ、とのお題が。ワトソンの回答:Sherlock Holmes is cheerful, so Sherlock Holmes must have a case.「シャーロックホームズが陽気である、ゆえにシャーロックホームズは事件を抱えている」お見事!


Sherlock Holmes- Absurdly Simple, from The Dancing Men - YouTube

4)依頼者、ヒルトン・キューピットさんについてワトソンが調べようとするのに「もう調べた」。初期はとかく依頼人に冷たく、ワトソンが捜査に口を出そうものなら、やることなすこと凡人並みと上から目線のホームズ。これは「第1・2シリーズを通して」正典よりかなりきつめに強調されている。後にも立ったままでホームズの尋問に耐える老メイドを座らせるよう耳打ちしたのはワトソン(だと私は解釈している)だし。

この時も「直接本人(妻)に聞けば?」みたいなところが、もう少し包んだ言い方もできるんだけど、という。そしてお決まりのホームズが強制的にクライアントをドアへ。階段の下までエスコートし、客の緊張を和らげるのはいつもワトソンの役目。精神科医か安定剤か(笑)記録係件接客・秘書課長?

 これはグラナダの意図だと思う。これまで映像化ではギャグ的な立ち位置に回ってきたワトソンを、この版できちんと再評価しようという。冷淡なホームズに対して、ワトソンの、依頼者への気配りや、医師としての所見なども入れることで彼のポジションを確立。そうすることによって逆にホームズのエキセントリックさも引き立つわけだし、違う人格・人間同士の『友情物語』の色合いが強くなる。

5)ずっと気になっていた「トップ(シルク)ハットでない丸味を帯びた紳士帽子」について。With a fresh face, an open countenance, and wearing a brown bowler hat.って言ってる。(茶色の山高帽をかぶった)フランス語でシャポーロンとか語学の授業で習うあれです。やっぱり「ボーラーハット」でいいのかなぁ。

6)ホームズが221Bで吸うパイプは柄の部分がくね~っと長いモノ。これは正式名称はなんというタイプなのだろう。影絵やマークになっているのはもっと短いタイプですよね。この長いのは初期の頃しか登場しない。外出先ではケースに入れた紙巻きだし。そう、これでくわえているヤツです。

5)謎解きシーン――『暗号の論文』は読んだか?・・・って暇さえあれば論文書いてるホームズ・・・煙草の灰の研究とかね。残念ながら今世紀の欧州ではほとんど公共の場所で吸えなくなっちゃってるから(笑)今なら3万通りのIPアドレス回線とスパイウエアの関係、とかね。今はインターポール(国際刑事警察機構)がサイバー犯罪対策、すっごく頑張っているよ。1923年に英国に造られたはずだから――ホームズは後期にはその存在自体は知っていたはずだけれど彼の頭脳が今有ったらねえ・・・(何だか『ドイルさんへの手紙』みたいになっちゃった(笑))

  正典では「50分黙っててくれ」みたいなセリフをワトソンに向かって吐いていなかったっけ??あと、この時ワトソンが「じゃ静かにしてようか」といってソファーにもたれ読んでいる新聞は「タイムズ」だね。セリフも「タイムズでも読むか」って言ってるけど字幕が「新聞でもどう?」ってなってた。

6)『法則』システマティック――彼にとって、物事の第一歩は(推理の、科学の、人間界の全ての)『法則」を見出すことなのだと思う。ふと思ったのだけれど、ホームズのバイオリンも、きっとそうだよね。(「彼は上手に弾くのみならず、見事なまでの作曲をする」Byワトソン)

 【余談】ダンスもそうだ。ジャズにせよコンテンポラリーにせよ、勝手な振付で勝手に踊っているわけじゃない。全ては5つのパ(クラシックの基本の足ポジション)、基本のタンデュ、ディヴェロッペ、バットマン、、、全部、呆れるぐらい基本中の基本の法則。これを1週間7日、毎朝、どんなベテランでもどんな分野のダンスのプロでも、90分の基礎レッスンは必須なのだ。これを1日休めば自分で分かる。二日休んだら身体がどこかおかしくなる。もってりする。三日目には客に分かるっつーのは誰かの言葉で、大袈裟ではなくもとの調子を取り戻すのに6日かかってしまう。

 で、ホームズにとってその『法則』は基本的にはシステマティックな、極めてシンプルなものであり――そういうことをバイオリンや優れたドイツ音楽から彼は学んできたような気もする――、常に彼の推理の基本を支える根拠としているのではないかと。例外を認めないあたり、やはり(我々)凡人には少々エキセントリックに見えるのだけれど、何事か一つのことをやり遂げる人間って押し並べてそうだ。そういう狂気がなければ、歴史に名を残せない。

7)有名な解読シーン  

8)ワンダフル。名士のお屋敷。

 妻役の女優さんは頬のこけ具合、あごのとがった感じや髪型、いかにも19世紀

演劇風の所作で適役。さらにおびえた演技も良く、画面を通してイギリス演劇を観ているみたいな気にしてくれる。「月は人を変にさせるそうよ」なんて言ってみたり。オスカー・ワイルドものが似合いそうな。シカゴ人の設定ですが(笑)

9)机で書きものをするホームズ。机上のこまごまとした文具はマニアとして大注目だ、動画一時停止~~!!インク吸い取り機とか、当時の紙とか、、、、(ハナジ)

9)前作第1回でアイリーン・アドラーにもらった金貨は彼のベストのアルバートチェーンという金具についているんでしょうか?付けておこうって本人が(ホームズ)言ってたから気になって(笑)。愛情のためでなく、あくまで自身の推理を信じ抜き、唯一の失敗をこころに刻んで、理性を失わない戒めのため、付けていても全然おかしくない、と私は思うのだけれど。ねえ、ワトソン君。

10)テレグラムを打つ、ってなんかいい響き。「電報」じゃなく「テレグラム」って、、、倫敦の香りが・・・(妄想族)

11)H&Wがスパー(夕食)風景。いつもの事ながら、ホームズは食べない。ワトソンだけが、、、何それ、鳥??ワトソン、食事担当。ハドソンさんも腕をあげたねって、こんな大きな息子二人がいるんじゃねえ・・・「ホームズが食欲ある姿」って想像できない。なんかイヤ。知性と推理の勘が鈍る気が。本人も正典でそう言ってるし。それからホームズ、机の引き出しのコカインのケースを眺めて、手を付けず再びしまうシーン。なんか見落としがちだけど。

12)事態が急を要し『パンクラス駅へ!!』――ああ。。。住んでないと(こら。いいわけするな)地理に弱いなあ。もちろん東部へ向かう主要駅で、パリからのユーロスターが到着する国際ターミナルだってことは分かっている。しかし「この駅からの高速列車で乗客数の多いものは?」だの、地下鉄線は何本乗りいれているか、そう言えばリニューアル後はどうなったんだろう(私が訪れたのはその前)ここからいける世界遺産だの名所は、などなど、犯罪ネタで使える(笑)小さなディティールの一つでもあげろと言われたら、何だかフランスにかまけていたこの1年で、すっかり飛んでって、ぱっと思いつかないのだ。これは致命的じゃないか。う・・・・再インストール。

13)ディアストーカー姿のホームズ、いいな。後期はもう殆どかぶらなくなっちゃったから、見るなら1・2シリーズ、この細くて首がなが~い時。馬車の中のシーンなんて頬がこけてるぐらい痩せていてあごもシャープで(私の好み)ほんとくらくらしたわ(笑)動作も機敏だし――。

 

14)登場の地元警部はマーティン警部。あの口ひげは一体・・・

 捜査はホームズ主導。有ると思って探したから見つかる。推理が先なんだよね。警察は(常に小説の中では)それなしにただ現場にあるものだけをひろっているだけだから、見ているはずのものも、見えていないのだ。さらにその警察の「発表」とやらをおおいばりで正義と称して書く新聞って一体・・・

 簡単なことなのかもね。多数の平民に思い込ませた嘘が真実だから。バカと新聞は使いよう。Byホームズ

  やはりトドメは主役でないと。

15)ホームズが邸宅の、たった一度有っただけの末端の人間(メイドの名前、御者や、使いに出す男の名前)をちゃんと覚えて「有難う、誰誰さん」と名前付きで言うのはさすが。もちろんこのぬかりなさは、容疑者の疑いもあって最初から全部マーク、というのが第一義的だけれど、大事な情報源でもあり、いざとなったらこちらの味方につけていつ活躍してもらうか分からない、という保険の意味もある。紳士の、武士の、(笑)あらゆるビジネスの基本形をみる思い。「ホームズ物」って、日本では赤毛だのまだらだののせいで「児童文学」(怒)にカテゴライズされがちだけれど、英国では階級の高い(ハイスペックな)男性の教養で、ホームズに関するギャグなんて(これがイングリッシュジョークってやつか?)さっと言えないとダメみたい。(イギリスの博士課程の人から訊いた)ちなみに毎年恒例・2014年2月に選ばれるバレンタイン❤英国ベストカップル賞第一位は「ホームズとワトソン」だったらしい。

16)ホームズは事件を未然に防げなかったことを深く後悔する。

*ホームズ物でクライアントが亡くなる、あるいは悲劇になる物語

⇒『入院患者』:亡くなるが、これで良し、の納得の終わり方

⇒『フランシスの失踪』:第5シリーズの最初の話だが悲しすぎる結末。

*理由として「女」という生き物があまりに考えなしであり(あるいは無配慮な言動によって)最悪の結果、悲劇の引き金となったケースが多い。上記『フランシス』然り、ソア橋、ナポレオン、這う男、どれも女がホームズ並みの機知で、脳みそフル回転で未然に対策を練っていれば「事件にはならなかった事件」ばかり。考えも行動も足りない。

17)今回のは今でいうストーカー。「自分でなんとかしなかった女」が最後に発作的にとった行動がアレですか。ほんとうに愛しているんなら、自ら後追いではなく仇を討つためにその貴重な銃弾のひと玉を使うぐらいの執念がなくてどうする。

 私だったらこの話は「シカゴからのお尋ねモノを若き夫人が拳銃で打っちゃう、でもストーカーされていた事実があるため正当防衛、シカゴ警察からもよくぞと表彰されちゃう」・・・ってストーリーにするけど、それじゃお話にならんわね。ただのベタ記事で終わっちゃう(笑)

17)テーマ曲のイングリッシュ・ホルンが平原に響いて、そこを二つの黒い馬車がロンドンへ。懐かしい感じのする郷愁を誘う曲。音楽だけ張り付けたかったのに見つかりません~。3:33からエンディング曲開始。


The Dancing Men - Part 6 of 6 (Sherlock Holmes) - YouTube

【おまけ】:

Sherlock Holmes: Dancing Men Mug Dancing man MAGというのがありました。14ドルです。

Sherlock Holmes: Dancing Men Mug | MonsterMarketplace.com

Dances With Lathes T-ShirtこちらはダンシングマンTシャツです。

米国のショップみたいですが、他にもイキなSHグッズがいっぱい!!


Gifts for Sherlock Holmes Dancing Men | Unique Sherlock Holmes Dancing Men Gift Ideas - CafePress