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Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

BBCシャーロック1-3『The Great Game/大いなるゲーム』

Sherlock

 元ネタは「ブルースパティンドン」と「海軍条約文書」か。小ネタとして気づいたのは

・「緋色の研究」――太陽系の知識の欠如/「データ・データ・データ!」もか?

・「マスグレーブ家の儀式」――生首in冷蔵庫

・「ボヘミアの醜聞」――封筒の産地、パーカーの万年筆インクから特定など

・「オレンジの種5つ」――時報、昔の秘密結社は・・・のくだり etc

 第3話は内容山盛り。脚本=兄マイクロフト役のマーク・ゲイティス担当回!!

モリアーティーの存在もいよいよ踏み込まれる。

1)ベラルーシ共和国ミンスクの刑務所ってシュチュエーションからハマる。マイクロフトこの地域得意だよね?文法の間違いを冷酷に指摘するシャーロック。

PRISONER : Yeah, well, then I done it. SH : Did it.
PRISONER: Did it! Stabbed her,over and over and over, and I looked down, and she weren't… SH : wasn't.
PRISONER : ..moving no more.――― Any more. 

2) Bored!Bored! Bored! (退屈すぎてつまらん)

 正典でも何度も出てくる。壁にはVR(ヴィクトリア女王のイニシャル)を打ち込むが、21世紀はスマイリーマークを。

3)ジョンのブログ、ほめてる。字幕にはなっていない部分「ピンク色の研究」か?いいね(ちゃんとniceと言っているよ)

4)有名な地動説の一件:セリフは正典と違って独自性があって吹きだしたのだが What does that matter?! So we go round the sun. If we went round the moon,
 or round and round the garden like a teddy bear, it wouldn't make any difference!

 テディーベアのくだりが「お花畑の周りを」回っていようがって字幕になっちゃってたのはどういうわけ?完全意訳し過ぎ。

 「仕事がないと脳がふやける」――のセリフも元ネタがあったはず。

5)ハドソンさん「夫婦喧嘩でもしたの?」221B最強キャラ。

6) 兄マイクロフトのいる場面は空気の圧力が違う。レッグワーク(足での調査)が必要と国家の大事に関わる捜査依頼。バイオリンをいじる弟。SH「サラのエアマットはどうだった?」兄「ソファーだよシャーロック」ソとファの間を切るように発音する。ソフトなものいいだけれど常に一手、兄にあり、という兄弟勢力図。

7)国防省開発中の計画ネーミングが『ブルース・パティンドン』とはcool(カッコいい!!)日本では真似できない。

8)レストレード警部、ヤードで彼のオフィス風景は初。ほんとうにこういう51歳ぐらいの、豊富な経験をもつ上司に恵まれたかった。。。。「明白だ」はオビエスリーを使ってたな。

 SHが封筒を切るシーンでは、黒の革手袋がアップで写っていた。どこの製品?

   

9)顕微鏡をのぞくSHの横顔は好きだ。何か独特の近寄りがたい雰囲気がある。あと「同情が何になる?」は正典の中にもあったはず。今回、シャーロキアンも度肝をぬく脚本の徹底ぶり。マイクロフト監督・・・。

  凡人なら「ここまで言っていいか」「節度」など理解できるが、ハイ・ファンクショニング・ソシオパスの彼にはそのレベル設定が分からない。10ある事実は10、通達してあげないと気が済まない。ジョンはそれは「親切」ではないよ、とまるで12歳の男の子に諭すみたいに言うんだけれど、彼の頭脳内でそういう処理方法はかつて経験したことがない。

10)シャーロック、何か発見した時の「Ah~」の発音が色気あり。

 天才が、自分で気がつかなかったことを自分で気づいた時だけのもの。若干「どうして今まで自分は気づかなかったんだ?」という自責の念が0.1%程(天才はあまり後悔しないので)入り組んだ、彼だけにしか分からないhisワールド内Q&Aの末の

「ハイ・ファンクションため息」(笑)。

 ロンドンを駆け巡るタクシーの中の二人、というシュチュエーションが今回多く、気に入っている。この密室で、SHは時に謎解きを、あるいは思考過程の解説を行うが、自分をさらけ出しやすい場所でもある。出会った頃はジョンをバカにし、自分の能力を誇示する空間であったのが、今回必要に迫られて「僕の一番最初の事件」(普通こういうタイプの人間は、絶対に過去を語りたがらないはず)を早口で解説する――泣きツボは、当時、社会の誰もが疑いを持たなかったのに、僕(シャーロック)だけが疑念を抱いた、とジョンにいうところ。SH「僕も子供だった」間髪いれずJO「若い探偵だ」(フォローしているよ!)SH「警察に話したのに、取り合ってもらえなかった」たぶん、この話、シャーロックは今まで他の誰にもしていない。そんな気がした。

11)ついに公式「精鋭」として兄の元に送りこまれたジョン(良かったね?)「乗車カードを持っていたのに使っていなかった」⇒セリフはロンドンの「オイスターカード」と固有名詞を。ちなみに、これがフランス・パリの事件だったら「ナヴィゴ」。東京ならさしずめパスモあたり?

 ←オイスター   ←ナヴィゴ  

12)レストレード警部、現場に彼ら(2人)連れて行く時の堂々たる仕草。ハスキーで渋い声がこのドラマ、他に居ないからひきたつ。書類をみて歩きながら、銀行投資家のBankのBa、固有名詞イアン・モンクフードのMoに強いアクセントを置いて深炒り焙煎珈琲の味わい。普段ちょっと情けない役回りも多いのに、組織の中枢、指揮官的たる資質を滲みださせるのが彼のこういうシーンの演技。

 

13)被害者妻に泣き真似で迫るシャーロック。日常茶飯事でしょう。

 ジョンに「健全な趣味」を持てと、切手集めと釣りを勧めるドヴァノン巡査。こいつがエピソード2-3でシャーロックを葬る(世論側)のに加担してるわけだから、どうも最初っから好きになれない登場人物でもある。あ~、いる、こういう融通きかない女、みたいな(笑)

  

 車にあったショップカードを、お互い顔を見ずに早足で歩きながら手渡す後姿の撮影シーンが(ほんの数秒)うまい。男同士の(変な意味じゃなく)『コレッグ』(同僚」として信頼しはじめている。でなければ情報源(証拠)原本を渡したりしない。

14)小銭あります?なんていうSHの突飛な質問ぶりにもジョンは既に驚かなくなってきた。彼の捜査手法が分かってきて、どう対応していいか掴めてきたのかと思いきや、店を出たら何にも分かってないの~~ガクッ。この「ギャップ」が、脚本のかなり「狙っている」ところかと。マーティン演じる「ジョン」キャラの確立。

15)番組開始35分、シャーロック「I'm on fire!」(燃えてきた!)(⇒萌えて?)。堂々たる後姿の二人again!

16)老婦人:ボトリックス注射と使用人ラウルの一件で、ジャーナリストに扮したジョンがシャーロックを使って初貢献かと思わせた。がSHは3枚は上手。ジョンの心中察するに余りあり、そこへ来てSH初の被害者を出してしまう。正典でも後半ホームズの失敗が描かれ、自分を頼って来た人間を救えなかった時の落胆ぶりは割と大きい。初めて「今回は僕の負けだ」と、TVを見ながら。

 

 医師であるジョンとの言い合いは烈しいが、ちょっと嬉しいシーンでもある。

 幼少から学生時代、そして今に至るまで、変人とSHをバカにする人は大勢いたが、本気で、シャーロックに感情をぶつけるような人間は、ひとりだっていなかったはずだから。Jo:「人の命がかかっているんだぞ」SH「気にすればいいのか?Will caring about them help save them?(気にして助けられるのなら)なら、僕は気にしない」「Heroes don't exist, and if they did, I wouldn't be one of them./ヒーローになりたくない」これも正典にある有名なセリフの引用だった。

 かつてない正典(キャノン・原作のことです)へのオマージュっぷりで恐れ入る。このシーンのジョン、いやマーティンの沸点寸前の演技は助演男優賞モノ(笑)。いつもの当惑+でも今回は自身のプライドにかけて引けない部分がある。噛みしめてみえる表情とか、右手のこぶしによく出ている。SH「怒って協力拒否、思いやりもその程度か」と追い打ちをかける。感情みたいなもん、機械的、システマティックに処理しなけりゃ僕は他にやることあるからねとでも言っているみたいに。

17)朝のテムズ川現場検証、本当にさむそう。私はこのドラマの撮影季節が、常に冬のロンドンであるのが気に入っている。夏のロンドンでは殺人も起こらない(笑)そしてシャーロックの携帯情報検索網にはインターポール(国際警察)の文字が。さすが21世紀版。インターポールについては以前グラナダ記事でアップ済み。

 ジョンの「ファンタスティック」(お見事)のヒトことにもにこりともせず「お世辞はいい」。これは本心だろう。別にほめられたくてやってることではない。自分の能力からしたら、当然の結果。

 今回BBCの好きなとこは、グラナダみたいにやたらSHが「正義」を振りかざさないところ。(第一それを言うには彼がエキセントリック過ぎるキャラ設定)

18)56分の有名台詞「need data!」タクシーのなかでメモを取り出すシャーロック。モレスキンじゃないよね?シャーロックグッズ(英国男の文具)が知りたい!!

19)太陽系の知識に疎い、あのネタを放り込んだのはのちの伏線。凡人がぼけっとしている間に見えないものをみる。恐ろしい瞬間的データ処理能力を発揮し、某新星の誕生年から贋作トリックを10秒で暴くシーンは見もの。ちなみにこの新星は存在しないと思われる(笑)フィクション創作上の贋作見抜きテクとしては「ないものがあるか、あるものがないか」のどちらか。基本。

 

19)ジョンが出たあとにモリアーティーを夜中12時のプールにおびき出す連絡を打つところは彼の意図がありありと観てるほうにわかる。1対1の決着を(ジョンを巻き込まず)挑むわけだが――。

20)モリアーティーとのプールシーンは9分に及ぶ。あまり好きではなかったんだけど。SHをおびえさせるほど張り合えるキャラに(外見的に)見えない。コンサルティング犯罪者を名乗るなら――(つまり二人の出どころが同じなのだから――)ちょっとミスキャストっぽい気もするのだが。特にシリーズ2後半。

 字幕版でSHのセリフがなるほど訳しにくい箇所。That, er...thing that you...that you did, that, um...you offered to do...that was, um...goodなど、彼の動揺ぶりがよく伝わるようにするといいのだが「あの、さっき君が僕にしてくれた事は――(身を挺してまで自分を護ってくれたこと)⇒それは普通の人間にできることではないので――good=字幕は「良い」となっていたけど良い??では直接的過ぎる。「その、、、すごい」と言っている本人も適切な言葉が見つかっていないニュアンス、どうしたら出せるか。

 このプールの時の様子が、ジョンのブログ  The blog of Dr. John. H. Watson   にアップされている。ジョンの描写は本業の新聞記者なんか遥かに上回る的確さで胸に迫る。あとどうやってモリアーティーに捕えられたのか、未公開シーンも。ソーシャルを使ったさすがの21世紀番組のあり方に脱帽。

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(ジョンワトソンのブログ:訳)

 『どうやら気絶させられたらしい。気が付いた時は、塩素の臭いがした。そこは、スポーツセンター内のプールだった。体には爆弾が巻き付けられている。コート越しに伝わる感触。その時耳の中で「声」がした。イヤホンを付けられていた。「お前もバカじゃないはずだ。今から俺の言うことをそのまま繰り返せ。さもないと2度とブログがかけなくなるぞ」。
 声に指示されるままプールサイドに出た。シャーロックがいた。聞き覚えのあるはずの声は、僕の「台詞」を開始した。まるで僕が一連の事件の黒幕であるかのような印象を与えるものだった。この僕ジョン・ワトソンこそ「モリアーティ」だったかのような。それを聞いた時のシャーロックの目は「怒り」ではなく、迷子の子供のような「悲しみ」に満ちていた。シャーロックが、ほんの一瞬でも僕を疑った思いは、彼のその人間的な感情の表れにかき消された。シャーロックは、僕との友情に思いを向けてくれた。あのシャーロックが、不本意とはいえ「心」を見せたのだ。僕が体に爆弾を巻きつけているのに気が付くと、シャーロックは全てを悟った』

 こんな風に解説されると、ぐっと来るではないか・・・。