読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

BBCシャーロック/シーズン2-1話:『A Scandal in Belgravia・ベルグレーヴィアの醜聞』

Sherlock

 唯一シャーロックに強烈な印象を残した「あの女」ことアイリーン登場。Blgravia(ベルグレーヴィア)」はロンドンの上流住宅地。 脚本は1-1話を手掛けたスティーブン・モファット。もちろん正典の『ボヘミアの醜聞』が元ネタ。

 もう何度も書いているけれど、FNAC(フランスの量販店、ヨドバシみたいな)で英仏版1/2を買い、さらに2014年1月、シリーズ3発売と同時にUKの1~3のセット組(英語のみ)即購入。日本語字幕が見た~い熱が高まってユーチューブを血眼で探すも、吹替はあっても字幕なし。

 仕方ないので一番セクシーで一番好きな、この『ベルグレーヴィア』の話で、2月頃、せっせと英文全スクリプトを作成し(仏語は挫折)邦訳をつけていた。なんて虚しい・・・。しかもこの回、とくに冒頭は(正典マニアにとって)翻訳者泣かせのオンパレードじゃないか(笑)。

 某動画配信サイト、9月に一か月有料会員になったにも関わらず、字幕版はシーズン1の3話しかなかったのだ!しかも他ツールはフランスからだと「お住まいの地域では×××」と表示されアクセス不可!“ああ~ん”(←アイリーンの悶えではない)結局また英語版。

【日本語字幕でシーズン2・3が見られるサイトご存知の方、是非当方まで愛のコメント、シルヴプレ♪】では感想いってみましょう。

************************************

 ★モリアーティーの携帯の着信音:「Stayin' Alive!(生き続ける)」――DVDのコメンタリー版見てたら「これ、最高だろ~!」って大爆笑しているのはモファット監督。妻の発案だそう。お葬式で誰かが鳴らしちゃったんだって。

★ジョンがブログに書くシャーロックの「その他の事件」――正典オマージュの嵐。英国ギャグ炸裂。「まだらの紐」と「ギリシャ語通訳」(マイクロフト初登場の原作)「海軍条約文書」のアルファベット、一字ずつもじってる。芸が細かすぎる!!

 

★221Bの日常風景。冷蔵庫に親指⇒正典「The Engineer's Thumb(技師の親指)」。

★ハドソン夫人が二人を「ボ~イズ!」って呼ぶの、可愛い❤

★バッキンガム宮殿――

 

★「おぉPower play(パワーゲーム)か。英国で最も強大な一族相手にさすが女王様、おもしろくなってきた!」アドレナリン出まくりのSH。良かったね??

★正典:『高名な依頼人』のもじり。シャーロックの「I'm not the Commonwealth」は、依頼人が喫煙者であることを受け「凡人じゃない」と。 

You see, but you do not observe(見ているけれど、何も観察していない)

★『Now it's time to add a splash of colour」・・・ (collar!?)これは英語で聞くと一発で分かる。カラー(色)を付ける、と、扮装した牧師様のカラー(襟)を付けると、二っつの意味をひっかけたのか~。つーか、脚本楽しんでる??

32-24-34。素晴らしいプロポーション。★Vatican Cameosの意味がよく分からなかったが、そういう事件があったということ?SH&JOだけに通じる。

★SH「やれるか?」アイリーン「もちろん」。ーーなんか息あってるじゃん。

★マイクロフトがハドソン夫人に「ちょっと黙ってて下さい」失礼なものいいをした時。(Oh, shut up:辞書によるともっと軽蔑的で『黙れ』とか『うるさい、やかましい』という『罵倒・抗議の表現、使い方注意、とある。せっかくだから今度わたしも使ってみよう)ジョン&シャーロックが声を揃えてマイクロフトを叱責するシーン。おお大好きだ。君たち(笑)。

 ちなみにフランス語だと黙れ、は ta gueule(タ・ギュール:夫婦喧嘩などでのみ使用、普通は言ってはいけない言葉、と載っている。なんだこの辞書・・・笑)

★クリスマスシーン。SHは自分の態度が人を傷つける仕組みが理解できない。(そもそも興味ない)⇒彼の生活/能力に関連ないから。

 この辺、ジョンが受け入れ今後補強関係になっていくのが見どころかも。前回当ブログ・ソシオパスの記事で触れた「アスペ疑惑」も次回バスカヴィルで出てくる。

 モリーに「すまない」と謝るなんて。あのSHが他人のこころの動きに気づいて謝罪しただと?頬にキスをしてやる姿を見て、この人間的な変容は、とジョンがちょっとビックリしてSHを見るのもいいではないか。アイリーンの影響か?と疑ってみたりしているのでは。

★レストレード警部――奥さんの不倫に思い当たる。眼だけの演技。これはコメンタリーでも言っていた。

★マイクロフトは暖炉の前で、ひとりでこのイヴの夜を過ごしているんだ。それはそれで、孤独な男。かかって来た弟の電話にも「どうした、クリスマスには連絡し合えって法律でも出来たか?」と。この兄にしてこの弟あり

 

★死体安置所のモリーのセリフ「どうして分かるの?顔を見ないで――」に私は星五つだ!!!! シャーロックにあれだけさっき、自分の気持ちを踏みにじられていながら、さらに追い打ちとなるこの決定打。内容がこれじゃ切なすぎる。この一言にモリーの「女」の想いは全部詰まっているのだけれど、それが分かってマイクロフトもさあと首をひねって敢えて答えず弟の跡を追う。

★この後の兄弟会話シーンのカメラ(写真右)がまた秀逸。マイクロフトも、天才の(ソシオパスの?)弟をもつ兄の重責と悲哀すらうかがえて、そんな兄の前で、最後まで弱みをさらけ出そうとはしない弟。

 病院のある患者の死を前に SH「あれを見ろ。家族を想ってあんなに泣いている。僕たちはどこかおかしい」兄「終わらない人生も壊れないこころもない」

 

★そんな麗しき兄弟愛のシーンの一方、実はマイクロフトはジョンに命じて、シャーロックの部屋であるものを探させていた。最初は例の証拠物品である携帯だと思ったけど、二度目、三度目に見た時にどうもこれはシャーロックの「アディクション(依存)」に対し兄の配慮と考えるべきか?と。

 モルグでの死体確認後は、兄公認でタバコ一本解禁し吸わせた。「ほんとに今夜が危ないんですか?」というジョンのマイクロフトへのセリフから推測されるのは、たぶんコカインとか麻薬?まあ21世紀だからどういうモノになっているのかは分からないけれど、ハドソンさんとふたり手わけして彼の部屋から「ヤバそうなもの」をあさった。でも「何も出てこなかった」。

 だからジョンはデート断ってまでマイクロフトの命令に従い監視役を引き受けざるを得ない。案の定、帰って来たSHが全部お見通しなのは「靴下の場所変えてないだろうな」という一言でバレバレ。

 文章家として「ドラマ」という表現形式、今回ほど嫉妬した日はない。小説で100行、1,000行費やして、仮にどれほど優れた描写だったとしても、表現しきれない人間の想いを、脇役のたった一言が繋ぎ、託すことができる。それが「映像」脚本であり、役者であり、ドラマである。ああ~ん(笑)

★「ハドソンさんが居なくなればイングランドの滅亡だ」 

   

★ジョンのブログのカウンターが「1895」で止まっている理由。シャーロキアンオタクなら500字以内で即説明できますが、

 これは私はDVDコメンタリーを見てググって勉強した(笑)ホームズの世界における最高の年とされているから。そしてなんと、監督スティーブン・モファットがそのネタをツイッターで明かした!!(下記画像)ヴィンセント・スターレットという詩人の「221B」という詩があって、ホームズの素晴らしい世界というのは「1895年である」と書かれている。つまりこの詩へのオマージュ。ああ~ん(笑)オタクぶりもここまで徹底されれば尊敬に値する!!!

モファット監督のツイッター ←最後の一文にご注目1895

★新しい依頼人がベッドに寝てる。私、突然ギャグを思いついたんだけど「アイ・リーン」って「I lie in ~」(私は横たわる)だよねえ・・・。

★SH「Oh, you’re rather good」(なかなかやるじゃないか)ジョンにすら言ったことのないセリフをアイリーンにいうのは、シャーロックより一歩上手の防衛を見せたから。「お食事」したいのね。彼女、そうやってずっと身を護ってきたんだと思う。

 どれだけ<お食事>しても(正典と違って。正典『ボヘミアの醜聞』ではアイリーンは誠の愛を得ることになっている)彼女はこの脚本では、満たされない飢えを抱えた女として描かれているのでは。身の上は語られることはないけれど、孤児とか、よっぽど不幸な生い立ちだったとしてもうなずける。

★「Hamish」がワトソンのミドルネームなのはれっきとした理由がある。正典シャーロキアンの間で長いこと語られ続けてきたのは周知の事実。これに関しては長い長い、論文ほどの歴史があってスティーブン・モファットとマーク・ゲイティスはもちろんドラマで使う算段だったはず。楽しんでるな、この人たち(笑)

 

★「007,007」の必死なシャーロックに、任務を忘れて素で惹かれているアイリーン。素肌のほうが透明でずっときれい。モリアーティー、どうも「ITオタク」にしか見えない。もっと天才肌のキャスト選んでほしかった・・・。

★マイクロフトの「死者の飛行(Flight of the Dead)」おじゃんに。でもシャーロックの暗号解読でSH「借りは返せたかな、兄さん」「情けがあるなら保護してやれ」アイリーン「このままじゃ半年ももたない」

★シャーロック「Sentiment is a chemical defect found on the losing side(感情は負ける側の化学的欠陥)」


The Iceman, The Virgin and The Dominatrix - Sherlock Series 2 - BBC - YouTube

★マイクロフトとジョンのコンビが素敵。ジョン:「吸うんですか?」マイクロフト:「カフェもタバコもめったにしないよ」カフェでの会話は、ジョンがちょっとアイリーンに対して嫉妬している感じもあるんだよね。唯一シャーロックを本気にさせたという。

 探偵を選んだのはどういう心の動きだったのか――「分かりませんね」というジョン。今回の話を通してマイクロフト&ジョンの絆も、だいぶ強まったみたいだけど?!?なんだかラストに関してはフランスではものすごい「深読み大会」になっちゃってていろんな奇抜な意見があるみたいですが。私は映像のまんま、素直に受け取っている派で、コメンタリーでも監督陣はそういうふうに言っていたから。

★ラストシーンは「The woman、 The woman――シャーロックの微笑みの意味が、何だか泣けてくる。おそらく、“らしくない”自分への自嘲でもあるのだろうけど。一度ぐらい、そんなことをしてみてもいいのでは、と。外は、そんなシャーロックを全部流し去ってくれるみたいに―――ロンドンの雨が、やまずに降りつづけている。