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Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 パリのよしなしごとを徒然なるままに

SHERLOCK/シャーロック3-3 His last vow 『最後の誓い』感想その1 シャーロックの決意

 シーズン3の1話でジョンを拉致し火あぶりにしようとした人物がようやく実態を見せた。チャールズ・オーガスタス・マグヌセン。(CAM)「新聞社オーナー。富と権力を使い情報を集め、世界各国の重要人物の弱みをつかむ『恐喝の帝王』」
恐喝によって得た権力で、英国首相にすら影響力を持つ反吐の出るような男。

 正典元ネタは『恐喝王ミルヴァートン』。正典でもホームズはこの男を毛嫌いしている。他『犯人は二人』や『唇のねじれた男』。脚本はスティーブン・モファット監督。


Sherlock Series 3: Episode 3 Trailer - BBC One - YouTube

 今回は日本語字幕映像を見つけることができたので、やっと英ー仏版から逃れて、自分で初見のときワードで日本語訳を書きためていたものと、実際の字幕邦訳で商業的に文字になっているものとの違い(やっぱり全然違う)を比べて勉強させてもらった。映像字幕は難しい。厳しい字数制約の中での作業だとは思うが今回「飛ばし」気味の表現が(原文でそこまで言っていないのに日本語で意味を与えすぎて逆に、原文の意図を損なっていると見受けられる箇所)が幾つか気になった。

 例によって数回に分け、さらにあと2年ほどシリーズ4まで時間が出来てしまう。「3」全体を通したシャーロック物語の総括と、脚本視点からの考察、4の展望までを小刻みに記事で続けてアップして行きたいと考えている。まずは3のラストまで一気に感想編を駆け抜けよう。

  

1)BBC版ではまずある女性議員が夫の過去の交際がらみでマグヌッセンに脅されSHに助けを求める、という設定から始まった。これだけで、充分こいつの変態ぶりが分かる描写にはなっている。

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2)結婚式から1か月後。ジョンのトラウマ復活⇒無意識に「危険を求めている」状況が描かれる。

 ここは正典『唇のねじれた男』の設定通りの展開です。『冒険』収録作品で朝っぱらから妻の友人ケイトがドラッグ中毒になって帰らない息子を助けてと泣いて相談に来る。SHのところにいこうにもいないんだそうな。(正典では夫がアヘン漬けになっていて、ワトソンがアヘン窟に救出に行くとそこにホームズが、というハナシ)

 ジョン、行かずにはいられない。グッズをしのばせヤバそうな男もあっさり撃退し(犯罪者の扱いに慣れてるんだ⇒誰のせい?)なんか生き生きとして見えるジョン。「Ah, hello, John. Didn’t expect to see you here. Did you come for me, too?ジョンか、ここで会うなんてね。僕のためにも、来てくれたわけ?」(正典とおんなじ進行です)

 

 SH,いやベネディクトさん、大真面目にただの浮浪者になっています。病院ではモリーが往復ビンタ。良かったね、そういうトモダチがいて。イギリスのブログを見てたら「モリー惚れ直し」というのが結構ありました。モリーはいい加減、ソシオにしか惹かれない自分の性格を受け入れ、シリーズ1ではあんなにおどおどと自己が無いキャラ設定だったけど、今ではこいつらを相手に(笑)どんどん強くなっている、と評価するもの。なるほど、そういう見方もあるのか。にも関わらずSH「Sorry your engagement’s over:婚約解消は残念だけど」指輪なくて有難かったよ、とか言っている・・・。

 中毒者「ビリー」もなかなかの推理を見せるのでちょっと警戒してしまった。こいつもまた何かある?誰かの差し金?とか。SHドラマ見ていると、かなりの警戒癖が。

マイク兄:The siren call of old habits.いつもの誘惑にはまったか。今オクラホマにいる両親に連絡するらしい。私は個人的に、SHのアディクション体質は――仕方ないと言ったら語弊があるけれど、天才にはつきものというか、あの頭脳を支えるにはもつべくしてもった習慣だと思う。それが無いならアドレナリン200%の事件が無くては彼は生命維持出来ないからね。

 

マイク兄: If you go against Magnussen, then you will find yourself going against me.マグヌッセンを敵にするなら私を敵にするのと同じことだ。SH「気づいたら知らせるよ」

シャーロック。いくらハイになっているからと言って兄に暴力はやめなさい(笑)中学生ですか。いつもは敬意を払ってるのに。やっぱ薬のせいなのかな(笑)

  

3)シャーロック、ジャニーンと付き合う。

 ブライドメイドのジャニーンと濃厚キス。これは正典『犯人は二人』で、敵情報を得るためメイドと婚約を交わした(当然演技)ホームズ、というまんまですな。

マイクにシャーとか言った??一緒に風呂も入った。ジョンのリアクションはまたも視聴者代表で、有難う。

 Jo:彼女できたんだね?Sh:ああ。でマグヌッセンのことなんだが――(延々と説明を始める)JO:yes,you have:そっか。そうだよね(できたんだ)SH:Sorry what?(何だって?)JO:だから君に、彼女が、できた。SH:は?みれば分かるだろう。(延々とこの会話が続く)

 *ここでのツボはSHが「アップルドーア」という彼の要塞(それはマグヌッセンの富と権力の象徴であり、西欧諸国のあらゆる重要人物の弱点を握っている)について話をしているのにも関わらず、さっきジャニーンから誘われた「4人でディナー」について頭がいっぱいになっているジョンを叱責するところ。Seriously? I’ve just told you that the Western world is run from this house and you want to talk about dinner?(本気で言ってるのか?僕、今、西洋諸国がこの家にいいように支配されているという話をしていたよね。でも君はディナーの話なんかしたいんだ?」――あ、良かった。これを聞いて、なんかほっとしてしまった。

 若干繰り返しの記述になるが、前回、ご承知「ジョン祭り!」でキャラ返上で浮かれ、はじめての「友情ごっこ」に頑張っちゃってたSHだったので、自分の使命をすっかり置いてきちゃった(置き忘れた、とまでは私は捕えていない)、少々アホ面のShだった。けれどもあの夜、皆がまだしばらく続く享楽の中にいるのを背中で確認しながら、ひとりコートの襟たてて闇へ出ていったラストシーン、あそこで「シャーロック・ホームズであること」へ彼は帰っていった。と。今回こういうふうに自らの「職務優先」をびしっと冒頭で明言してもらえて。

 ついでに言うと、この3-3でこれから始まる「帰って来たシャーロックホームズ」は、もちろん「(自分を楽しませてくれるための)事件が無ければツマラナイ」と単なるパズルごっこで自己満足していたSHでもなく、かといってシリーズ3に入って、(空白の2年ののち)妙に人恋しくて人間性を求めるSHでもない。今度こそ、社会のため、人を救うため(これはジョンに言われた言葉だけど)その他人には与えられていない特別な才能を使うと決めたのだと思う。そのことによってかれは「ほんとうの喜び」を感じられるはずだと。

 まぎれもないシャーロック自身の、(もちろん、誰かの弟でもなくて)、一人の自立した「男」としての決意が読み取れるように思う。実際、3話の中でのSHは非常にいい顔(男の顔)をしている。触れたら壊れてしまいそうな、陶器みたいだった部分が無くなって、代わりに苦しみに真っ向から耐え、呻き声をあげ、のたうちまわり、自分の責任で守りたいもの(者)のために強くなる。

 3話では、そういう決断を下す真剣な横顔が いくたびか、ある。